ホタル(その5)

2012.07.17(2013.07.10 updated)

『なぜ邪魔をする・・・あの人間を喰らえば、おまえもその美しい姿のまま自由になれるというのに・・・水の流れを変え、われらから自由と力を奪い、この場所へと繋いだのはあやつら人間なのだということを忘れたわけではあるまい』
『・・・忘れたわけではありません。でも、だめなのです。わたしにはできません』
『なぜだ』
『話しても無駄です。あなたにはわからない。心に憎しみしか持たないあなたには』
『ああ、憎いさ。憎くてしようがない。この爪でやつらの腸をえぐり出し、この牙で骨をかみ砕いてやらねば気が済まぬ。もう時間がない。今宵が最後だ・・・われはここから解き放たれ、再び自由と力を手に入れる。邪魔をすれば命ないものと思え』
『・・・』



 陽は落ちたが、まだ闇は訪れていない。
 空には雲が広がっているが、それは薄く、雨が振る様子はなかった。
 昼と夜の境目の何もかもがあやふやになる時刻に、湊はその淵を見下ろす土手の上に立っていた。
 黒いTシャツとジーンズ姿は昨日のままで、どこで何をしてきたのか、あちこちに泥がこびりついている。
 ぬるま湯のような微風が、解けかけた右腕の包帯をやんわりと嬲る。
 湊はジーンズの後ろのポケットに手を入れて、そこにあるものを確かめた。ざらりとした和紙の感触が指先に触れる。
 準備は整っていた。
 あとはその時を待つばかりだ。
 アルフレッドはまだ来ていないが、もうすぐが現れるだろうことはわかっていた。贄の呪いをその身に受けている者は、どう足掻こうともその場所へと引き寄せられるのだ。
 湊は溜息混じりの息を吐き出した。
 全身がだるかった。
 昨夜、アルフレッドの部屋を出てから、駅近くのネットカフェで形ばかりの仮眠を取ったのち、早朝から準備のために出歩いた。疲れたと感じるのは、その作業のせいばかりではない。
 右腕に受けた傷が熱と痛みを発し、体力を削っている。
 目には見えない糸のようなものが淵に潜む怪異へと繋がっていて、そこから少しずつ精魂を抜き取られているのだった。
 放っておけば、力尽きた身体はなんの抵抗もできずにあっさりと喰われるだろう。
 今夜が勝負だった。
 小石を踏む音が近づいてくる。
 湊が視線を向けた先に、長身の男がいた。赤いTシャツに穴の開いたジーンズにビーチサンダルという軽装で、金色の長髪は後ろで一つに縛っている。
「ごきげんいかが?」
「オレ・・・やっぱり、だめです。シオンをころすこと、できません」
 湊が皮肉をこめて言った言葉は、英国人には通じなかったようだ。
「じゃあおまえがエサになるとでも?」
 湊の嘆息に、緑の双眸がまっすぐに向けられる。
「はい」
 おまえ、馬鹿か? という氷の飛礫がアルフレッドに向かって跳んだ。
「自己犠牲の精神が美しいなんて思ってるんじゃないだろうな。おまえが喰われるってことは、俺も喰われるってことだ。あいにく俺はそんなおめでたい頭してないんでね。綺麗なお姉さんたちとイチャイチャする日々を諦めることなんてできないんだよ」
「そんな・・・」
 ぶつぶつとできないを繰り返すアルフレッドを無視し、湊は闇に沈んでいく淵の辺りを見つめた。上空はまだ十分に明るいが、足元に見下ろすこの一帯は、さっきよりも深い色を纏い始めている。
 湊の携帯がチャイムを鳴らす。時間を確認してから、パクンと携帯を閉じた。
「そろそろだ」
 湊は淵の方へと小さな土手を下りていく。
「ミナトさん! まって! まってください! オレはまだっ!」
 アルフレッドが危なげな足取りで湊の後を追う。
「!」
 土手を下り、川岸までの僅かな草地に足を踏みいれた瞬間、アルフレッドはすぐにその異変に気づいた。
 この前襲われたときのように、その場を包む空気がずしりと重かった。そしてそれはビリビリと神経質に振動している。淵のある辺りを覆う木々はざわざわと生き物のように震えている。
 どくどくと心拍数があがる。手のひらにじわりと汗が浮き上がる。季節は初夏だというのに、ひやりとするほどの空気に鳥肌が立つ。
 緑のものを見ると人は安心し、緑のものが揺れていると人は逆に落ち着かなくなるという。風に煽られる木々は人を不安へと導く。だから人に会うときには緑の服は避けるようにと、祖母に言われていたのを思い出した。
 なぜ今こんな時に・・・
 今まで感じたことのないような怖れが、厳しい祖母の言いつけを思い出させているのだろうか。
 関わってはならないと、アルフレッドに繰り返し言い聞かせた祖母もまた、こんな恐怖を味わったのだろうか。
 彼らは脅威の存在。
 どれほど美しくても、儚げでも、それは彼らの仮の姿。
 彼らの本性は深い闇の底にある。
 人間の叡智の届かぬところに生きるものたち。
 決して交わることはできない。
 今、アルフレッドは、次から次へと溢れて出る祖母の言葉の意味を、はっきりとその身体で感じ取っていた。
 人外の前に晒された人間の命が、いかに小さいか、生まれて初めて、自分の命の危険を感じた。
 次の一歩を踏みだすことさえ躊躇われる。
 それなのに、目の前にいる自分よりも小さな青年の背は、重い空気を押し上げるようにまっすぐに伸び、その歩みはしっかりと力強い。アルフレッドのような特殊な力は何も持っていないように感じられるのに、その存在がひどく大きい。
 自信の塊のような彼の態度がどこから来るものなのか、アルフレッドには全く理解できなかった。
「あんたは近づくな」
 たとえ動きたくても、次第に深まる闇の重さに四肢を奪われたまま、アルフレッドは身動き一つできないでいた。そのこめかみから、汗が一筋、流れ落ちる。
 その時だった。
 空気を引き裂くような咆吼が、二人の鼓膜を振るわせた。
「!」
 ふいに我を取り戻したアルフレッドが、目を見張る。
 湊の背後の闇が歪む。
「ミナトさんっ!」
 淵から水が盛り上がり、鋭い爪の形と成る。
『な・・・なにをしたっ!』
 腹の底に響くようなどろりとした声が淵に響き渡る。その鋭い爪が、二人ではなく宙を掻く。
「アレがしゃべっている?」
「しゃべるなよ。草の中に屈んでいろ」
 湊の指示に従い、膝をつく。アルフレッドの周囲の草むらが、振動する空気に呼応するかのようにさわさわと震えているのがわかった。
 まるで恐怖に戦いているようだ。
 アルフレッドは拳をきゅっと握りしめ、湊の後ろ姿を見つめた。
 湊が一歩前に出た。
 その左手の指は尻のポケットの中にある何かを掴んでいる。
 それが何かはわからなかったが、このまま行けば、あの水の腕から飛び出すかぎ爪に肉を抉られるだろう。
「ダメだよ! きみがたべられちゃう!」
 湊の言いつけも忘れて思わず叫んでいた。
 湊は振り返ろうともしない。また一歩、前へと足を踏み出す。
 どうやってこの状況を乗り越えようというのか。
 アルフレッドの心臓は耳元にあるかのように、ガンガンと鳴り響いている。
『なにをしたのだ!』
 怪異の放つ咆吼が波動となり、湊に襲いかかる。湊は直撃を避けたが、その鋭いまでの風圧が皮膚を小さく刻んだ。髪がはらりと舞い落ち、頬、腕、胴、大腿、足に、小さな切り傷がばくりとその口を開く。
 何かがおかしかった。
 前に襲われたときは、まっすぐに自分たちに向かってきた鋭い爪が、今は何かに藻掻き苦しんでいるように見えた。
 まるで、水を失った魚のように。
「ミナトさんっ!」
 湊の皮膚から流れる赤い血に、顔面を蒼白にしながらも、アルフレッドは叫んだ。
「おまえは黙っていろ!」
 湊は頬の傷を手の甲で拭う。
 おおおおおという地を這う声が沸き上がる。
『おのれ! 人ごときが!』
 水から成る腕と爪が、湊、目掛けて振り下ろされる。
 湊の左手がポケットの中のものを取り出すべく、指先に力を込める。
 湊から流れ出た血液がぱたたと夏草を打つ。
 その時、アルフレッドの中で何かが弾けた。
 草を蹴り、走り出す。
 自分だけじっと隠れていることなどできなかった。
 なぜなら。
 自分ならば、彼を助けることができるのだから。
 幼い頃から持っていたその力は、憧れの世界への鍵だと思っていた。
 この力がある限り、いつかあの場所へ行けるかもしれない。
 そんなことをふわふわと夢見ていた。
 アルフレッドは、今、初めて、その力を彼らへと向けた。
 その方法は、祖母から教わっていた。
 一度も使ったことのないまじないの詞が記憶の中から甦る。
 その長い詞を紡ぎ始めた瞬間、湊へと向かっていた爪先が、ふいに飛び出してきたアルフレッドへと向きを変えた。
「アルフレッド!」
 湊が腕を伸ばす。
 ポケットに忍ばせていた紙を引き出した。それは和紙に墨文字で記号を書き付けた怪異封じの札だった。左の人差し指と中指にはさみ込み、アルフレッドへと向かう怪異へと伸ばす。爪がアルフレッドののど笛へと突進していく。
「くそっ!」
 鋭い切っ先がアルフレッドへ触れるその瞬間、白い光が横切った。
「!」
 白く細い腕が淵から伸びた怪異の腕に絡みつく。
『なにをする!』
 スミレの花のようなワンピースが踊る。
「シオン!」
 水から成る怪異の腕が大きく撓った。
「っが!」
 湊の身体を草むらへと弾き飛ばす。封じ札が破れて落ちる。
「ミナトさんっ!」
 起き上がろうとする湊がゲホゲホと咳き込んで、再び草むらに倒れ込む。
『今です! 早く! 続きを!』
 シオンの身体が薄紫に発光する。
「ノー! シオン! はなれて!」
『さっきの詞の続きを!』
 藻掻き暴れる水の腕を細い身体が繋ぎ止めている。
「いやです! シオン! できません!」
 紡ぎ始めた詞は、その存在を消滅させるためのもの。
 怪異とともに、シオンまで消えてしまう。
 たとえ、この身が怪異に喰われても、それだけはできない。
『それを消すことが、私を助けることになるのです』
「どういうイミですか?!」
『・・・っあ!』
 怪異の腕の切っ先が、するりと形を変えた。鋭い爪が長い蔓のようなものに変化し、倒れている湊の足へ絡みついた。ずるりと湊の身体が引きずられる。
 淵の中へ引きずり込むつもりなのだ。
『わたしを信じて!』
 スミレ色の瞳がアルフレッドを射抜くように発光した。
 アルフレッドが右の手のひらを前に突き出すように伸ばす。
 そして、紡ぐ。
 それは、英語とも違う不思議な詞だった。
 アルフレッドの手のひらから白い靄のようなものが現れ、シオンとともに怪異を取り巻いていく。
 咆哮も、動きも、その靄に搦め捕られ、小さくなっていったとき、その中心から光が生まれた。
「シオン!」
 白い光が弾け、湊とアルフレッドの身体が飛ばされた。
 強い光に視覚を奪われる。
 怪異の咆吼が耳をつんざく。
 強い風が吹き荒れた。
 風が水を攫う。
 夏の豪雨のように、激しく打ち付ける。
 バチバチ、バチバチと。
 薄れていく意識の中で、アルフレッドは、スミレ色の光を見た気がした。



 やがて風が止み、光が消えた。
 怪異とシオンの姿はどこにもなかった。
 そのすべてを見ていたのは、土手の上にぽつりと灯った街灯一つだけだった。



「う・・・ん」
 湊のくちびるから息が零れた。
 戻ってきた意識に合わせて、ゆっくりと瞼を押し上げる。
 空は明るさを失い、すでに藍色に染まっていた。
 軽やかに虫が鳴き、儚い風が草を揺るがす。圧迫するような空気は消え失せ、夏の夜の情景がそこここにあった。
 肘をつき身体を起こす。少し目眩を覚えたが、湊はそのまま立ち上がり、アルフレッドの姿を探した。
 街灯の光が効力を失いかけた草むらに、金色が散らばるのが見えた。近づいて、その肩に触れる。
「ん・・・」
 赤いTシャツの袖から覗く腕に、三本の筋は無かった。自分の腕の傷も消えているだろう。贄の呪いが解けたことにほっと息を吐き出した。
 アルフレッドに怪我がないことを確認すると、湊は淵の方へと蹌踉めきながら進んだ。
 その小さな塊は、淵を隠す草むらの中に転がっていた。
「ミナトさん」
 目を覚ましたアルフレッドが、ミナトのそばへおぼつかない足取りでやってきた。
 無言のまま湊が差指し示したところを覗き込む。
 そこには小さなトカゲのような生き物がいた。鱗に覆われた身体をくねらせている。その表皮がぬらぬらと禍々しい光を放つ。
「これがやつの原型だ。何かのきっかけで水虎という怪異になったんだな。恐らくその原因を作ったのは人間だ。こいつは、人間に復讐しようとしていたんだろう。もう何の力も残ってないだろうがな」
 湊のいうように、その小さな姿からは何も感じられなかった。
 ここにいるのは、弱々しい小さな生き物だ。
「あのまじないは、けすためのものだと、おもっていました」
「怪異は消えた。正しいじゃないか」
「こんなふうに、もとのすがたがのこるとは、おもってなかった・・・あ! シオンは? シオンももとのすがたに、もどったのですよね?」
 アルフレッドが辺りの草むらをガサガサと探し始める。
「ああ、そのようだな」
「え?」
 アルフレッドが草むらから顔をあげると、湊が淵の辺りを見ていた。
 その視線の先で、ほわりと小さな光が生まれる。
 少し青みがかった光が、ゆっくりと明滅を繰り返した後、ふわりと飛び立った。
 残るはスミレ色の光の軌跡。
「蛍だったのか」
 一匹の蛍が湊の横をすり抜けた。
 アルフレッドの周りをゆるやかに一周する。
 その光をアルフレッドが追う。
「シオン・・・?」
 ホタルは、アルフレッドの呼びかけに応えるかのように、一度だけその金の髪に触れた。
 小さな光が、アルフレッドから離れていく。
「シオン! まって!」
 アルフレッドが小川に近づくと、そこには沢山の小さな光が瞬いていた。熱を持たない冷光が、あちらこちらでゆっくりと瞬く。
 どれがシオンなのか、もう区別はつかなかった。
「シオン・・・」
 立ち尽くすアルフレッドの隣に湊が静かに立った。
「この近くでは、昔はよく蛍が飛んだそうだが、もう何十年も飛ばなかったらしい。水が汚れてしまったせいだとこの辺りの人は考えていたらしいが、こいつのせいだったんだろうな」
 この小川に住むものたちは、水虎に支配された。
 シオンは水虎が力を得るためのエサとして利用された。
 水虎が消えた今、ここの生き物たちは解放された。これまでの分を取り返すかのように、蛍たちが優雅に飛び回っている。
『それを消すことが、私を助けることになるのです』
 シオンの言葉は、そういう意味だったのだ。
 けれど。
 蛍の命は短い。
 元の姿に戻れば、その命も儚く終わる。
 それでも彼らは元の姿に戻りたかったのだろうか。
 アルフレッドにその答えは分からない。
 人は決して向こうの世界には入れないのだから。
 けれど、シオンが最後に放った光が、とても嬉しそうに感じられたことが、その答えのような気もした。
 それが自分を納得させるだけの自己満足でも、今は、そう思いたかった。
「・・・どうやったんですか?」
 しばらくの沈黙の後、口を開いたのはアルフレッドだった。
「ん?」
「あのとき、それは、もがき、くるしんでいた。あなたはなにをしたのですか?」
 アルフレッドの問いに、湊はふんと笑って応えた。
「簡単なことだ。水を止めたんだよ」
「ミズを? なぜ?」
「こいつは水虎の一種だ。水が無ければ生きられない」
 アルフレッドは水虎が暴れていた淵の辺りを見た。深まりつつある闇に目を凝らすと、いつもよりもずっと水位が低かった。もう子どもの足でも跨げるほどの水量しかない。
 湊の言っていた準備とはこのことだったのだろう。
 用水路ならどこかに水を流したり止めたりする設備がある。周囲の他の用水路はちゃんと流れているところをみると、湊はこの用水路に流れる水だけをせき止めたようだ。
「あのかみは?」
「かみ? ああ。札か。水をせき止めて妖力を弱らせることはできても、おれに捕まえる力はないからな。総本山の小道具を借りたんだ。特別な札で捕らえたい怪異に触れると、能力を封じる仕掛けがある」
「ソウホンザン?」
「おまえみたいな能力者がうんざりするほどいるところだ。それもえばり腐ったやつばっかりな。おまえも入るか? その金髪がなくなるのは惜しいが」
「はいったら、またシオンにあえますか?」
「その答えはわかってるはずだ」
 アルフレッドの緑の瞳が潤んでいく。
 湊は小さく溜息をつくと、くしゃりと前髪をかき上げた。
「あのままだったら、蛍たちは、やがて力を失った水虎とともに消えていただろう。ここはあいつが支配していた世界だ。あいつの力を受けて、ここを住処としていた蛍も怪異となった。だが、人を喰らわなければ生きていけないほどに水虎は弱っていた。おまえが最後の賭だったんだ。水虎が元の姿に戻った今、やつの支配から解放されて、蛍は気の向くままに飛ぶことができる。それが儚い命だとしても、本当の姿に戻ることができたんだから、満足だろう」
 さっき、自分が考えた通りのことを、この青年の口から聞けるとは思っていなかったから、少しびっくりして湊を見つめた。
「それは、じこまんぞくではないですか?」
 自分の中にあったもやりとしたことも吐き出してみた。
「そうかもな。どうすれば良かったかなんて、一生、答えは出ないだろう。でも」
 湊はそこで言葉を区切り、飛び交う蛍に目を向けた。
「おまえはこの光景に心を奪われないのか?」
 小さなせせらぎに添って飛び交う小さな光たち。
 つがうために互いの命の火を燃やす。
 その光の軌跡は短い生の謳歌そのものだ。
 湊の言葉がなくてもわかっていた。
 彼らの喜びに満ちた歌が、人ならざるものたちに寄り添うアルフレッドの心に、しっかりと届いていた。
 それは幻ではなく、確かにそこにある力強い命の歌だった。




 ジャリを踏む音にふと顔をあげると、隣にいたはずの湊の姿はもう土手の上だった。
「あの!」
 湊が足をとめた。
「きみは、なにものですか?」
 ゆっくりと振り向く。
「俺は九条湊。なんの能力も持たない零能者だ」
 その顔に怪しい笑みを浮かべながら、湊の姿は土手の向こうへを消えていった。
まだこれで終わりではありません。もう少しだけ続きます。おつきあいください。